中学生に「日の出を見たことがありますか?」「日の入りを見たことがありますか?」と問いかけると、手を挙げるのは半数ほどしかいません。毎日繰り返されているはずの自然現象なのに、実際に見たことがないというのです。
あるとき、「品川から見て太陽は太平洋から昇るのか、それとも沈むのか」と尋ねると、答えられない子がいました。さらに、「太陽は東から昇るのか、西から昇るのか」と聞いても、正解できない子が少なくありません。もしかすると、都会で育つ子どもたちは、太陽の動きに関心を持つ機会がそもそもないのかもしれません。
私が子どものころは、毎朝のように日の出を見て、夕方には沈む太陽を眺めていました。誰に教えられたわけでもなく、太陽は東から昇り、西へ沈む。だから地球は西から東に自転している――そんなことが自然と身についていました。
今の子どもたちは、そうした「当たり前のこと」を、教科書の中の知識として“覚える”のです。身の回りの自然に目を向ける機会が少ないのでしょう。太陽がどこにあるかも気に留めず、時計やスマホがあれば時間が分かり、自分の影すら意識しない生活を送っています。
私が小学生だった頃は、太陽の位置で方角を知り、影の長さでおおよその時刻を感じ取っていました。6月が最も日が長いことも、体感として知っていました。
都市に暮らす子どもたちにこそ、自然とふれあい、太陽や風、空の変化から学ぶ体験が必要だと強く感じます。都会を離れたときには、ぜひ空を見上げ、自然からの「授業」に耳を傾けてほしいと思います。