「赤信号は渡ってはいけません」——これは、誰もが知っている“当たり前”のことです。
では、なぜ「当たり前」なのでしょうか?
あるとき、中学生に「車がまったく来ない状況で、赤信号を渡ってしまう人はいますか?」と尋ねると、2人の生徒が手を挙げました。
「なぜ渡ってしまうの?」と聞くと、彼らはこう答えました。
「危なくないから」
確かに、その場に車が来なければ、実際に事故は起きないかもしれません。しかし、「赤信号を渡ってはいけない」理由は、それが法律で定められたルールだからです。
よく「悪法も法なり」と言われます。もしその法律に不合理があると感じたとしても、それを破ってしまえば、改善のための議論や変更もできません。
たとえば、医師から処方された薬をきちんと服用しなければ、効果の有無が分からず、次の適切な治療につなげることができませんよね。それと同じように、法律というルールを守ることが、社会全体をよくする第一歩になるのです。
法律は、長い年月をかけて、多くの人の知恵と経験から生まれたものです。そこには必ず理由があります。そして、そのルールを「自分だけなら」と破ってしまうことは、やがて社会の秩序を壊すことにつながります。
「みんながやったらどうなるか?」——この視点を持つことが大切です。
もちろん、子どもが「自分くらいいいだろう」と考えてルールを破ってしまうこともあるでしょう。しかし、それ以上に問題なのは、周囲の大人がルールを守らないことです。その姿を見て育った子どもは、自然と「ルールは守らなくてもいいもの」と考えてしまいます。
実際、親子連れが赤信号を無視して横断する場面を見ると、私はその子の将来を思い、不安になります。
親は、子どもにとっての「生きたお手本」です。だからこそ、大人がルールを軽視するような行動は、強く慎まなければなりません。